『旅のラゴス』
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/03/30
- メディア: 文庫
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丸善&ジュンクの書店の人によるおすすめの本として挙げられていて惹かれて購入.あっという間に読んた.面白かった.筒井氏の本を読むのは初めてかなぁ.ひょっとすると,中学生か高校生のときに『時をかける少女』を読んだかもしれないのだけど,記憶にない.テレポーテーションとか古代宇宙船とかSFの要素もあるのだけど,むしろ『三銃士』とか『パルムの僧院』などの冒険小説みたいな感じ.(『旅のラゴス』はラゴスの若いときだけでなくて,後半は壮年まで書かれているので,冒険小説だけという感じでもないけど.)
あっという間に読めて好きな本といえば,
北杜夫『怪盗ジバコ (文春文庫)』も好き(『ドクトル・ジバゴ』じゃなくて).これは高校生か大学生くらいのときに読んだのかなあ.引越しのたびに,本を大量に処分しているのだけど,『怪盗ジバコ』は今でもなぜか書棚にある.
ラゴスはなぜ旅をするのか,というので,カヴァフィスの「イタカ」を思い出した.(カヴァフィス自身は私はそれほど好きではないですが.「イタカ」は好きな詩です.)
イタカ
イタカに向けて船出するなら
祈れ,長い旅でありますように,
冒険がうんとありますように,
新しいことにたくさん出会いますように,と.
(……)
祈れ,旅が長くなりますように,
初めての港に着く喜びの夏の朝に
何度も何度も恵まれますように,と.
(……)
イタカを忘れちゃいけない.
終着目標はイタカだ.
しかし,旅はめったに急ぐな.
何年も続くのがいい旅だ.
(……)
イタカが貧しい土地でも
イタカがきみをだましたことにはならない.
きみは経験をうんと仕込んで
旅の終わりには賢者になるだろう.
その時にはイタカの意味がわかる.
おのおのにとってのイタカの意味がな.(『カヴァフィス全詩集』より)